相次ぐ中小書店の休業・閉鎖 「通販」などに押され /北海道

◇住民の誘致運動、結実も
 道内の中小書店の休業・閉鎖が近年、相次いでいる。売り場面積が1000坪(3300平方メートル)を超える「メガ書店」の出店や、インターネット注文による宅配、コンビニエンスストアなどライバルが出現したことに加え、携帯電話やパソコンの普及で「本離れ」が進んでいることも背景にある。一方、地方の住民から「文化の拠点の中小書店を守ろう」という動きも出ている。【鈴木勝一】


 ■北見の老舗閉店
 7月6日、北見市中心部で営業していた1947年創業の老舗書店「福村書店」が事業を停止した。
 利用者の年代に応じて高さを変えた陳列棚や、コミックより広い児童書コーナー、地元ゆかりの本を幅広く集めるなど、住民ニーズを細かくとらえた個性的な店作りで地元に愛され続けた「まちの本屋さん」。しかし、負債は約5億6000万円に上り、10月に大型書店「コーチャンフォー」が開店予定のこともあり、閉店に追い込まれた。
 ただ、その後、市民約15人が「地域書店の存続を願う市民の会」を結成。福村書店の元幹部や弁護士らと相談を重ね、地域書店の存続の道を模索している。同会の小川清人事務局長は「福村書店は自分史や郷土史を出版する地元の人たちを大切にしてくれた。売れている本だけでなく、地域の文化を発信する役割がある」と、地域書店の重要性を強調する。


 ■最盛期の2割に
 書店の経営状況は年々厳しくなっている。テレビゲームやビデオ機器、パソコン、携帯電話などの普及で娯楽や情報収集の方法が多様になっている。加えて、インターネットの普及で欲しい本を1冊から注文できる通信販売サイトが登場している。
 資本力のある大手書店はメガ書店の出店やインターネット通販の強化などで対抗しているが、地方の中小書店には有効な対抗手段がなく、倒産や閉店へとつながっている。
 道内の書店でつくる北海道書店商業組合によると、組合員数は82年の732店(支店登録含む)をピークに減少傾向が続き、今年4月30日には130店とピーク時の2割以下になった。
 過去5年間に、「ブックス平和」(旭川市、07年)や「丸文書店」(小樽市、09年)など、地方の老舗の倒産が目立つ。


 ■書店呼び隊
 「まちから書店が消滅」という事態を受けて住民が立ち上がり、大手書店の誘致に成功した例がある。7月21日に留萌市に開店した「三省堂書店留萌店」だ。
 同市では昨年12月、市内最後の2書店が閉店。コンビニエンスストアやスーパーでも扱う雑誌やコミック以外、市内で本を買えなくなった。「子供たちが使う参考書や問題集が買えない」「旭川や札幌まで車で買いに行くにしても、冬道は大変」。子供を持つ主婦や高齢者らの悩みは深刻だった。

 留萌振興局などが学童用の参考書などを販売する臨時出店者を募集したところ、三省堂書店が応じ、期間限定の臨時店舗が設けられた。営業が4月末で終わると、主婦の武良千春さん(49)ら市民が「三省堂書店を留萌に呼び隊」を結成し、誘致の署名活動を始めた。大手書店の出店基準の目安は人口30万人とされ、留萌市は人口約2万4000人と遠く及ばないが、署名は人口の1割を超す2500人分が集まった。

 武良さんは「もう二度と本屋さんのない留萌にしたくない。これからが正念場」と、「呼び隊」の名称を「三省堂書店を応援し隊」に変更し、活動を続ける。同書店留萌店の今拓巳店長(62)は「ポイントカード入会が5400人にも上った。人口規模から言って考えられない割合」と驚く。

 同書店札幌店の横内正広店長は「人口が少ない地域での経営は実際厳しいが、行政と市民が一体となって書店誘致に努力してくれた気持ちに応えた。留萌が地方における書店経営のモデルケースになるよう、成功させていきたい」と話している。



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 ◇最近閉店した主な書店
06・11 なにわ書房グランドホテル前店(札幌)
07・12 アラモアナ(旭川
      ブックス平和(同)
08・ 7 伊沢書店(根室
09・ 5 丸文書店(小樽)
10・12 誠文堂書店(留萌)
      留萌ブックス(同)
11・ 1 冨貴堂MEGA(旭川
    6 丸徳小田原書店(釧路)



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 ◇最近開店した主な大型書店
07・ 3 コーチャンフォー札幌新川通り店
    4 帯広喜久屋書店/ザ・本屋さん
08・12 ジュンク堂書店札幌店(現・MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店)
09・ 2 三省堂書店札幌店
10・ 9 コーチャンフォー旭川
11・ 6 ジュンク堂書店旭川



8月28日朝刊

最終更新:8月28日(日)11時41分 毎日新聞